マイナス40℃!過酷な現場で働くゴムパッキン
特殊ゴムの製造で、成長産業に参入

株式会社 熊谷ゴム工業
福岡県久留米市田主丸町田主丸989-1
■代表者: 熊谷 浩昭
■創業: 平成13年5月28日
■計画承認日: 平成30年2月28日
 
■TEL: 0943-72-0391

現場で磨かれた技術が会社の礎に

平成13年の創業当初より、主要取引先が自動車部品を扱う大手企業だったため、先方の厳しい基準を満たすべく技術力を磨いていった「熊谷ゴム工業」。業界大手の取引先だけに求められるレベルは高く、品質管理のノウハウなどもここで培われていった。
試行錯誤しながらも、確かな技術力が求められる自動車部品を、長年に渡り納品してきた。その実績が他の会社からも認められ、他分野へも事業を展開。
現在の取引先は130社にも及び、電力や公共事業などの取引も増加傾向にある。
取引先の業種に偏りがなく、年間を通して安定した受注を実現している。

技術力を生かした積極的な姿勢と、労力を惜しまない態勢づくり

取引先メーカーの製品づくりに参加
取引先のメーカーでゴムを扱う技術者が減ってきていることもあり、「熊谷ゴム工業」では取引先に技術的アドバイスを行うコンサルタントも手がけている。
油に強い・耐久性がある・薬品に強いなど、ゴムの種類により、その特性はさまざま。それぞれの特性を生かした素材の選定など、より良い製品を作るための提案などを行っている。
アドバイスを求められるのは、これまでに蓄積してきた技術力と、取引先からの信頼があってこそ。コンサルタントをきっかけとした、新規取引も増加している。

あらゆる注文に対応できる態勢を
業界全体として、短納期の注文が増え続けている現在、製品の仕上げ作業を海外の外注処理で行う企業も多い。そんな中「熊谷ゴム工業」がこだわるのは、ほぼすべての工程を自社で行う内製化。
仕上げ専用の部門を持ち、専用の従業員を10人以上置いている。
これにより、在庫を持ちたくない取引先からの短納期の注文をはじめ、機械化が難しい小型製品の大量受注や多品種小ロットの注文にも対応。
さらに工場に夜勤者を置くことで、突発的な発注にも対応できる態勢を整えている。
取引先130社による安定した受注の影には、他社にはない不断の努力が隠されている。




経営革新計画を策定してみようと思ったきっかけは?

筑後地区には大手2社と、その下請けとしてのゴムメーカーが多数存在します。
そのため工業技術センターの呼びかけにより、久留米のゴム企業7社と産官学連携で「水素機器で使用できる高圧水素用ゴム」の技術開発を行いました。
水素ステーションで使えるゴム製品を視野に入れたもので、すでに実用化の目処が立っています。
この「水素用Oリング」の事業化と、その特性を生かしたさらなる新製品の開発および販路開拓のため、経営革新を取得しようと思いました。

経営革新計画の内容

Q. 新商品の概要と、その新規性を教えてください。
工業技術センターなどと共同開発した高圧水素用ゴムには、超低温〜高温、常圧〜高圧という過酷な環境下での性能が求められました。
そういった過酷な環境に常時、しかも長期間さらされ続けた上での性能が必要となるため、ゴムの最適な配合などを模索し、7事業所からサンプルの提出などを行ってきました。
完成した「水素用Oリング」は、工業技術センターと協力会社7社の連名で、特許を申請中です。
この「水素用Oリング」の事業化はもちろんですが、今回の開発で実用化した要素の中でも、当社では“耐寒性”に焦点を当て、他分野への展開を図ろうと考えています。
簡単にいうと「マイナス40℃の環境に耐えるゴムパッキン」の他分野への展開です。

Q. 将来の展望は?
他分野への展開では、モーター産業やロボット産業などを想定しています。
特殊な環境下でも使えるゴム製品を開発したことで、モーターやロボットといった成長産業への参入が可能になりました。
「第4次産業革命」のもと、工場や物流における無人化やロボット化は急激に進み、モーターやロボットの需要は拡大の一途を辿っています。
特殊な環境下(冷凍庫内や寒冷地など)での使用も増加すると考えられ、「マイナス40℃の環境に耐えるゴムパッキン」のニーズは少なくないと考えています。

経営革新計画を策定してみていかがでしたか?

Q. 策定期間中、どんな支援を受けましたか?
経営革新では事業内容を書類にしなければなりませんが、事業内容が専門的なため、第三者に伝えるのが難しい点があります。
そのため、ゴム製品に関しては、専門ではない経営指導員さんに文章の添削をしてもらいました。
文章として書くべきことや詳細に説明すべき点など、気づかされることが多々ありました。
また伝えたいことが多いと、ついつい文章の軸がずれたりするんですよね。そういった点を的確に指摘してもらいました。

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攻めの設備投資が利益を生む
2年ほど前に国が実施するものづくり補助金(革新的ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金)の助成を受けて、真空成形プレス機2台を導入しました。
これにより不良品が劇的に減り、ほぼゼロの状態に。ロスが減ったことにより生産性も向上しましたし、不良品が少ないため検査の手間が格段に楽になりました。
また、最新のシーケンス制御の導入により、品質も向上。取引先に求められる基準を満たす、複雑な造りの製品を納入できるようになりました。
現在では33台のプレス機で、毎月数百にのぼる品目を製造しています。

ベテランから若手へ…将来を見据えた技術の継承
当社の従業員はベテランを筆頭に、中堅、若手と、それぞれの年代がバランス良く働いています。
取引先の方が工場見学に来てくださることもありますが、とくに20代の若手社員が多いことに驚かれますね。
ベテランから若手への技術継承も順調に進んでおり、取引先の安心感にもつながっていると思います。
また若手社員や女性社員が多いことで、新たな取引先や新技術の取得など、幅広い業務の受託に積極的に取り組むことができています。