タグ一つで、新人がベテランの働きをする。
不可能だった生育段階のタグ付けに成功!

株式会社 吉岡国光園
福岡県久留米市田主丸町上原332-3
■代表者: 深田 稔
■創業: 平成12年9月1日
■計画承認日: 平成31年1月31日
 
■TEL: 0943-72-1578

生産者から有限会社、そして株式会社へ… 順調な事業拡大とそれを支えた苗木カタログ

果樹苗木の吉岡国光園、その歴史と事業拡大への歩み
果樹苗木の生産量日本一を誇る田主丸。とくに柑橘類に至っては、全国シェアの約8割を占めている。そんな田主丸において、昭和23年に果樹苗木の生産を始めた「吉岡国光園」。当時はまだ果樹苗木の農家で、売上の約8割をJAへの出荷に頼っていた。
現在、代表を務める深田さんは若い頃より「海外で農業をするのが夢」で、大学の農学部を卒業した後、東京の会社に就職。タイでレモンの試験栽培をするなど、農業への造詣は深い。 奥さまの実家である田主丸に帰郷してからは、平成12年に有限会社として法人化した後、平成23年には株式会社に組織変更。積極的な事業拡大を図ってきた。
深田さんが手掛けたカタログ販売や優良品種の発掘などが功を奏し、売上は順調に増加。売上ルートが増えた結果、今ではJAへの出荷額は全体の約7%にまで低下している。

まるでガイドブック!果樹苗木の生産者による苗木カタログ
「吉岡国光園」の快進撃を支えてきたのが、代表の深田さん自身が制作するカタログ。13年ほど前から毎年発行しているが、ここには深田さんの知識と情熱が詰まっている。
「ただのカタログではなく、読み物にしたかった」という深田さんの言葉の通り、品種・果重・種子数・樹勢・来歴・出荷時期などのリストとともに、品種の特長や、果樹の歴史、さらにはその発祥秘話まで、深田さんは調べた知識を惜しげもなく披露する。
現在、カタログに掲載されている果樹苗木は約500種類。各地を周り、地方に眠る古い品種を発掘することで、この驚異の品揃えを実現した。

昔の落ちこぼれ果実が、今や唯一無二のスター果実!

時代とともに、人々の嗜好は変化する。その時代の変化に対応するべく、「吉岡国光園」では優良品種の発掘や、新品種の開発に余念がない。とくに成果を上げているのが、優良品種の発掘。面白そうな情報を得ると、深田さんは現地を訪ね、生産者や地元の人に話を聞く。そこには必ず、生産者からしか得られない栽培技術や裏技などがあるからだ。
こうして調べた知識はカタログに掲載され、年々、カタログは分厚くなる一方。しかし、深田さんの目的は、それだけではない。
昔からの優良品種や、研究・開発で生み出された果樹はたくさんあるが、これまではJAに出荷できるかどうかがすべてだった。経済栽培という観点から見れば、例えどんなに優れた特徴をもつ果樹でも、JAに出荷できない果実を農家が生産することはない。
しかし、現在は直売ができる時代。「自分で売ろう」「自分で客を呼ぼう」と頑張る農家や観光農園にとって、JAに出荷されない果実は、自分の農園のセールスポイントになる。今まで見向きもされなかった果樹は、そのユニークさが武器になるのだ。
「夢のある人が好きで、そういう人を応援したい」と、深田さん。だからこそ深田さんは、今まで誰も見たことのない、特別な果樹を探している。




経営革新計画を策定してみようと思ったきっかけは?

苗木業界では人が育つのに、とにかく時間がかかります。上手に接ぎ木できるまでに10年、葉での品種判別ができるまでに10年と…。でも、これからは新規採用において、未経験者を積極的に採用していかないと人手が足りなくなります。
畑に植えられている段階でのタグ付けなら新人さんにもできますし、タグが付いていることで、その後の掘り起こしから出荷作業までを任せることができるようになりました。

経営革新計画の内容

Q. 新サービスの概要と、その新規性を教えてください。
経営革新のテーマは、「業界初自動稼働式苗木タグによる生産性向上」です。たとえば温州みかんにはいろいろな種類がありますが、品種を葉で見分けるのは10年以上のベテランじゃないと難しい。苗木生産者にとって、一番怖いのがそこです。「●●の苗木です」と言って売ったのに、農家さんが4〜5年かけて育てたら「××の果実がなった」というのでは取り返しがつかない。信用問題です。
確実なのは畑に植えられている段階だけ。そこから掘り起こしたら、他の品種が紛れ込むリスクが発生します。そうは言っても苗木は太くなるので、育成段階からタグを付けることはできません。これまでは出荷の最終段階でしかタグを付けてきませんでした。あくまでもお客さま向けの、一時的なものです。それでも取り違いミスの可能性があるから、これまで出荷作業はベテラン社員にしか任せられませんでした。
それが、今回の自動稼働式タグでは、苗木が太くなるのに合わせて自動でタグが緩むので、一番確実な畑の段階でタグを付けることができます。
去年から試験的に取り組んできて、5年は保つ丈夫なタグを開発しました。

Q. 将来の展望は?
タグ付けや掘り起こし、出荷作業を経験の浅い新人さんに任せることで、ベテラン社員にはもっと違う仕事をしてもらいたいと思っています。新しい肥料の試験など、実験やいろんな取り組みを試す時間が捻出できると思っています。
もちろん、品種の取り違いミスを限りなくゼロに近づけられるので、これまで以上に取引先から信用を得られるとも期待しています。

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農業に未来を描く!そんな夢追い人を応援したい
ある若者が言った、忘れられない言葉があります。彼は、「僕は百姓じゃない。僕は農業をしている」と言いました。もちろん、百姓という言葉には良い意味もあります。ただ、彼が言いたかったのは、「言われたものを作るのではなく、自分が作りたいものを作りたい」ということでした。
例えば、ものすごく大きな房のぶどうを作ったとします。これには付加価値があるから、単価は高い。しかし、大きくするときれいな色にならないから、そんなものは作っても無駄だと言われる。でも彼に言わせれば、「それならば、どうしたらきれいな色が出るのか。そこを工夫するのが農業だ」と。
こないだも若者が2人、「こういう苗木を作って欲しい」と事務所を訪ねてきました。話を聞いてみると、ものすごく面白くてね。協力することにしました。
私は夢のある人が好きなんです。自分の夢を持って、それに挑戦している人。そういう人は話していて面白いし、だから応援したくなる。カタログを作ってから、そういう夢のある若者と出会うことが増えました。

深田さんの自信作・フィンガーライムが大ヒット!
オーストラリア原産のフィンガーライムは、私が日本で初めて接ぎ木しました。中のじょうのう(小さな粒のこと)が丸いので摩擦がなく、果実を2つに割ったら中からニョロニョロと粒が出てくるんですよ。見た目が似ているため「キャビアライム」とも呼ばれています。 フレンチのシェフに協力してもらって、フィンガーライムで料理を作ってもらいましたが、とてもお洒落に仕上がります。カクテルグラスに盛り付けたら、キャビアの前菜のようですしね。他では手に入らない、大ヒット商品です。

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