一人ひとりに寄り添った支援で、可能性を広げる福祉施設
- 株式会社B&Y
- 久留米市田主丸町恵利952-4
- ■代表者: 別府 徳匡
- ■創業: 2022年3月30日
- ■TEL: 0943-72-1100
事業内容
同施設内で「就労継続支援B型」と「生活介護」の2種類のサービスを行う多機能型福祉施設を運営。医療、福祉関連の経験を持つ従業員や専門資格者を擁し、障害者に寄り添った支援で、自立を促し新しいことにもチャレンジできる環境をつくる。
About us 会社概要
「できない」を減らしたい
田主丸町の田畑に囲まれた、のどかな環境にある「ohana」は、一つの施設で「生活介護」と「就労継続支援B型」の2種類のサービスを提供する多機能型福祉施設です。「株式会社B&Y」を立ち上げた別府徳匡さんが自ら福祉施設を運営しようと思ったきっかけは、これまで働いてきた施設の方針に疑問を抱いたからでした。
精神に障がいがある患者さんは、病院や施設に10年、20年と長く預けられることが多く、ご自身でできることがあっても外で生活できるまでには至りません。別府さんが最も心を動かされたのは、障がいの度合いよりもサポートできる体制があるかどうかが、ご本人の生き方に関わる……と知った出来事でした。
行き場を失った人を受け止められるように
もちろん、障がいの度合やご家庭の事情によって施設に預けられる方、預けない方もいます。預けない家庭では「うちでどうにかしよう」と模索されている方が多いと別府さんは感じていました。また、先述した障がいの重い子のほうが自立した生活がおくれていたり、すぐに手をあげてしまって行き場を失っている子がいたりと、サポート体制の穴のようなものも見るにつれて、そういう家庭や行き場を失った人をサポートしたいと、起業に至ったのです。「今、困難を抱えている人がもう少しだけ自分でできるように、多少は自立した生活を送れるように――その自立を助けたいと考えました」。
「ohana」には「どこにも相談できなかった」という障がい者に関する問い合わせが多く入ります。スタッフに手を上げてしまったり、自分の身体を傷つけたり、他者を叩いたり、引っかいたり、押し倒したりする「自傷・他害」 をしたり……実際に会ってみると「きっと、できることがあるはず」と、チャレンジを応援したい気持ちが沸き上がってきます。「ohana」では「生活介護」と「就労支援(就労継続支援)B型」の2つのサービスを提供していることもあり、今まで生活介護しか利用されていなかった方がB型の作業に携われ、「起業した今の仕事場では、今までできなかったサポートも可能なので、ご家族の喜びの声を聞くのが嬉しいんです」と別府さん。今はサービスの拡大という新たな目標に向かって進んでいます。
Founding 創業計画
田主丸町商工会への相談
前職を辞めると決めてから相談しました。それまでは自分の出身地のうきは市の商工会に行っていましたが、僕がやりたい事業は、うきは市では人口に対して十分な施設があったため、1回事業を諦めたんです。スタッフから「それなら久留米市でやればいい」と話が出て、今は久留米市で創業してよかったと思います。
久留米市の福祉サービスの需要
うきは市だと小郡は遠いものの、久留米市田主丸町だと小郡は車で30分圏内なのでカバーできます。筑後川のそばにあるので橋を渡れば朝倉市と太刀洗町があり、結果的に広範囲をカバーできました。人口が多いから需要があるし、小郡市や筑前町、大刀洗町からも事業所として承認していただいています。
事業の立ち上げで最も大変だったこと
資金面のやりくりが大変でした。スタッフは前職で一緒だった方々が、僕と同じ気持ちで参画してくれ、スタッフには恵まれました。今いる人が1人でも欠けたら、今はありません。そのスタッフたちに報いたいと常々思っています。
今後の課題
社員たちは看護師や介護士ですが、現状の給与は平均的な水準ではないと思っています。利用者さんを増やし、社員の給料を上げていくことも課題です。
Future その後の展開と未来への展望
利用者の家族の声が嬉しい
今、「ohana」では利用者さんと、農作業や試験管の袋詰め、袋のシール貼りといった軽作業を行っています。作業ができそうにないと思われていた方が仕事に関わったり、みんなでドライブに行ったら普段ははしゃがない人が楽しそうにしていたり、「変化がやはり嬉しい」と別府さん。利用者のご家族からも「様子が落ち着いた」「家で自傷することが少なくなった」など言われると、喜びややりがいを感じますが、創業して間もない今、「現状に満足して楽しい」と思える段階にはまだまだ、だそうです。
やさしくあたたかい地域づくりに向けて
各市町村にいる相談支援員から紹介されて、訪ねてくる利用者を支えるのは、優しくて話しやすいスタッフの皆さん。「僕が考える理想のスタッフは、利用者を見て『この人はこれができそうだな』と、支援方法を考えて実行してくれる方。利用者さんの良さを探してくれるスタッフがいつの間にか集まってくれました」と別府さんは話します。なおかつ、「ohana」には看護師が多いことも、相談支援員に認知されていると感じるそうです。
通り一辺倒のマニュアルどおりじゃなく、利用者それぞれに寄り添い、その人の可能性を考えられる理想のスタッフたちが別府さんの想いに共感して集まってくれ、事業をスタートできた今。これからは、「その輪が地域の人にも広がって理解につながると嬉しい」と別府さん。「『いつでも寄っていいよ』『話しかけていいよ』という雰囲気で運営するohanaを、笑顔で見守る地域であってほしいのです」。別府さんが目指す障がい者福祉事業は、誰にとってもやさしく、あたたかく、そして明るく支え合える地域づくりも担うものでした。