創業者から事業を承継、女性も働きやすい鮮魚店を目指して
- 株式会社 志摩
- 久留米市田主丸町豊城576 C棟
- ■代表者: 中島 智巳
- ■創業: 2023年1月11日
- ■TEL: 090-3663-1974
事業内容
株式会社Aコープ九州が運営するスーパーマーケット「Aコープ夜須店」にテナントとして入る鮮魚店を経営。一般的なスーパーの鮮魚店と比べて種類豊富で新鮮な魚介類を提供するだけでなく、「3パック1000円」の商品をつくるなど、お客様に魚を選ぶ楽しみを提供する。
About us 会社概要
いつもお客様でにぎわう独創的な鮮魚コーナー
Aコープ夜須店にある鮮魚売り場に行くとまず、ずらりと並んだ鮮魚の種類に圧倒されます。同業他社が約10種類を扱うのに対して、ここでは常時16種類もの刺身を販売しているのです。そして目を引くのは「3パック1000円」のシール。「少量でもいろいろな魚を食べたい」と考えるお客様のニーズに応えるため、このお得なセット販売が生まれました。刺身だけでなく切り身や寿司などの惣菜も選べ、夕方以降はどんどん売切れていく人気商品です。
新鮮で種類豊富なうえに、選べて、お得――鮮魚を買う楽しさが、近隣住民はもちろんのこと、隣町などから来店する多くのお客様をとりこにしています。この鮮魚店を経営しているのが「株式会社 志摩」の代表取締役・中島智巳さんです。前身の会社「株式会社 太洋丸水産」が経営していたAコープ夜須店に社員として入社し、はじめはパック詰めを担当。やがて魚をさばくようになり、魚の種類を覚えて種類ごとにさばく技術も磨いていきました。その後店長に就任し、顔を覚えてもらうために1ヶ月に1回は鮮魚市場に顔を出していたと言います。「市場の人は信用が一番大事だから」と話す通り、その経験が経営を引き継いでからも活きていくのです。
この仕事が好きだからこそ、事業継承を引き継ぐ
中島さんが鮮魚店の運営に携わるなかで楽しいと感じるのは、お客さんから魚をさばくのを頼まれたり、食べ方について質問されたりすることです。「店に出て品出しをしていると、常連のお客さんが話しかけてきてくれます。今日は何が新鮮か、どう食べるのがおいしいか、私に聞けばいい、とわかってくださっているのが嬉しいですね」と中島さん。お客様とのコミュニケーションを楽しみながら、店長としての経験を積んでいる最中、転機が訪れました。「太洋丸水産」の代表取締役から事業継承を打診されたのです。「店長としての経験と実績が生かすことができるし、信頼されている嬉しさがあった」と話す中島さんは、会社と従業員を引き継いで、新しく「株式会社 志摩」として創業することになりました。
当時は15~16名の社員が働いており、社員全員の生活を背負うことを考えると、「やはり不安はあった」と中島さん。水産業界では珍しく女性が事業を承継することで、誰か辞めてしまわないか、中島さんが入社する以前から働いていた先輩たちはどう思うか…と、思案したそうです。それでも「引き継ぐ」という意志はぶれることはありませんでした。今は新しいメンバーにも恵まれ、「女性にもバリバリ活躍してもらいたいから、女性の私が頑張らないと」と中島さんは微笑みます。
Founding 創業計画
創業計画で考えた自社の強み
特売日に関係なく、毎日3パック1000円で販売している商品群を設けたことです。新鮮な商品の中から選ぶ楽しみを感じてもらい、その選択肢(刺身や寿司など)を増やしていることも強みです。また、水産業界には今は珍しいかもしれませんが、女性も積極的に雇用したいと考えています。
資金面の計画も立案
創業にあたって中小企業診断士の先生にいろいろ聞くことができて、数値目標などを整えました。私が個人で出店するのではなく、もともとのお客様がしっかりといらっしゃる店舗だったので、集客の心配はあまりありませんでした。
経営を任されてからの最も大きな変化
大きな違いは、“経営者としての責任”でしょうか。店長の時は日々の仕入れ内容や入荷状況のチェックやシフト管理、加工などの仕事が主でしたが、今はそれに加えて帳簿整理も行っています。また、従業員から電話で相談を受けることも増えました。
会社名「志摩」に込められた想い
前身の「太洋丸水産」1号店が糸島のAコープ志摩店にあり、今なお続いていることにあやかり、「株式会社 志摩」も1号店から始まって拡大し、長く続いてほしいという願いを込めて名付けました。
Future その後の展開と未来への展望
トライ&エラーで見つかる“発見”が楽しい
中島さんに仕事を長く続けてこられたモチベーション聞くと、「毎日違う工夫ができること」。魚を仕入れて、さばいて、加工して、売る…という、毎日同じようなことをしているように見えても、市場から仕入れる魚は毎日違い、お客様のニーズは店ごとに、そして季節によっても変わります。二つ切りで売れなかった魚が、三枚おろしにしたら売れる。農業が盛んな地域は、忙しいシーズンはすぐ食べられるタレ漬けした商品やパン粉を付けた商品が売れる。そういった同じ魚でもニーズに合わせた見せ方で、こんなにも売れ行きが変わるのか、「そういう発見が楽しい」と語ります。「他社の店舗に出かけて売り方を学ぶこともあり、良いところは真似て、結果が出ないことはすぐにやめ、志摩に合うことを探すのが楽しいし飽きません」。
事業継承をきっかけに広がる夢
今後は高い技術を持った従業員を増やしていくことが目標、と言う中島さん。期待のホープは娘のひかりさんです。ひかりさんは小学生の時、バスタオルを前掛けのように下げて「お母さん、ひいちゃんは大きくなったらお魚屋さんになる」と言っていそうで、その言葉通り、高校生の頃から技術を磨き、志摩に入社。今も日々、「何時までにこれを終わらせる」と目標を持ち、目覚ましい勢いで成長しているそうです。
従業員が育った先の夢はセントラルキッチンでお寿司や刺身を加工して、何店舗かにふりわけられる、水産加工の会社を作ることです。また、女性雇用も促進しながら、女性社員が増えたら託児所も作るなど、志摩をさまざまな人が活躍できる場にしたいと考えています。「それが成功したら、次は魚を使った居酒屋を…」事業を引き継いだことをきっかけに、中島さんの夢はどんどん広がっています。