捨てられるものに価値を見出し、人にもモノにもやさしい社会へ

ippoアップサイクル
■代表者: 中西 恵
■創業: 2022年9月3日
 
■TEL: 080-4287-8984

事業内容

通常であれば廃棄されているものに付加価値をつけ、生まれ変わらせるアップサイクルプロジェクトippo を立ち上げる。廃棄花や竹、久留米絣の端材などを買い取り、キャンドルやパネル、サシェなどを作って販売するほか、各地でワークショップも手がける。

About us 会社概要

捨てられているモノと人をつなぐ
これまで地元の出版社で編集・ライターとして働いていた中西恵さんは、取材を通してさまざまなものづくりの工房を訪れるうちに、まだ使えそうな物が捨てられている現実に、胸を痛めていました。やがて働いていた会社は残念ながら倒産。先の計画が真っ白になったタイミングで、「自分の人生は、本当にやりたいことのために使いたい」と思ったそうです。本当にやりたいこと――中西さんはもともと、手を動かして製作することが好きで、アートやアクセサリーをつくっていました。そして自身の創作活動を通して思い出したのは、「作業のなかで捨てられているもの」のことでした。
 その後たまたまSNSを見ていた時、日本サステナブルフラワー協会が推進するお花のアップサイクル活動を知り、「アップサイクル=本来であれば捨てられるはずの廃棄物に、新たな付加価値を持たせること」という言葉に初めて出会いました。まだ使えるものを活用して、循環するアップサイクルにいっそう興味を持った中西さん。創作活動を続けながら、「捨てられるもの」と「それを使いたい人」をつなぐ活動をしたいと考えるようになったのです。

“捨てられていたモノ”が輝くものづくり
2022年9月にモノと人をつなぐアップサイクル事業がスタート。まずは廃棄花を買い取り、キャンドルやアロマワックスパネル、サシェなどを作りました。また、前職で培ったネットワークをもとに、端材・廃材が出そうな地元企業や工房にアプローチ。「当たって砕けろ」の精神で営業をし、事業のビジョンや信念を一生懸命に説明して、理解を得たそうです。結果、今では作家さんに製作委託した久留米絣のくくり糸のアクセサリーや、らんたい漆器の竹の節の部分を仕入れて販売するほか、ご自身でキャンドルなどを製作されており、仕入れで協力してもらっている企業の担当者も、今まで泣く泣く捨てていたものが生まれ変わることを、とても楽しみにしてくれているのだそうです。
中西さんは「ここまでくるのは大変でしたが、素材と作家さんの橋渡しができる活動ができて、今はすごく楽しいです」と話してくれました。今後は商品を展示できて、各所から集めた廃材も販売でき、ワークショップも開催できるような、実店舗に良さそうな物件を探したいとのこと。「ippo」が推進するアップサイクルの活動には、地元の古民家を利活用するのが、活動の趣旨にも合っていて良いのでは、と中西さんは考えています。




Founding 創業計画

田主丸町商工会を知ったきっかけ
補助金の申請について調べていた時、SNSを通して商工会を知りました。個人事業主としての経験が浅く、何をしたらいいのか、何を知っておかないといけないかがわからず、補助金申請のほか、情報提供などいろいろとサポートしてもらえると聞いて入会しました。

田主丸町商工会とのやりとりで思い出深いこと
最初に事業計画書を作るサポートをお願いしました。事業計画書とは何か、というところからスタートして、この事業を通しての目標を明確にでき、頭の中を整理できたと思います。開業後の一年を過ごして来られたのはあの時、計画を立てていたからでしょう。計画書がなかったら、もっと行き当たりばったりだったと思います。

「ippo」という名称に込めた想い
初めの一歩からとり「ippo」と名付けました。「ippo」の作品・商品を通してフラワーロスを含め、私たちの身近にある食品ロスや環境問題などのさまざまな社会課題を知る最初のステップにしてもらいたい、という願いを込めています。

Future その後の展開と未来への展望

「可愛い」をきっかけに広がるアップサイクルの輪
商品はマルシェなどのイベントや百貨店のポップアップストアに出店して販売しています。お花をふんだんに使ったボタニカルキャンドルやアロマワックスパネルが人気で、「可愛い!」と手に取ってくれるお客様も多くいます。興味を持ったお客様に「実はこれは捨てられる花で…」とフラワーロスについて話すと、「こんなにきれいな花なのに」と皆さん驚かれるそうです。また、結婚式や母の日などの記念日にいただいた花束を、思い出とともに長く保存できるようキャンドルやキャンバスに加工するオーダーも受け付けています。
そのほか、県内外で開催されているワークショップではボタニカルキャンドルやサシェ、アートボードなど、廃棄花を使って参加者と一緒にものづくりを楽しんでいます。本来は捨てられていたはずの花を手に取ってもらいながら、製作の合間に、福岡県の花の生産量やフラワーロスについて話しているそうです。「可愛い」「きれい」をきっかけに、アップサイクル活動を広めているのです。

きれいにまっすぐでなくても、愛すべきものたち
これまで地域情報誌で編集に携わったのも、自然とアップサイクルの道に足を踏み入れたのも、「大学でジャーナリズムを専攻し、地域の課題や知られていないことを知らせたいという思いや気質があったからでは」と自らを分析する中西さん。地域の人が地域のことを知らない現状や、自分ごととして問題化しないことに、もどかしさを感じていたそうです。「ippo」の商品を手に取って、社会課題や地域産業を知ってもらうこと、そしてそれが廃材活用や社会課題への貢献につながることを願います。
 「規格外のお花といっても、用途によっては全く問題ない場合も多いです。きれいに美しくまっすぐ育つことが規格だとしたら、そこから外れた子たちは、私には社会から外されたように見えてしまうんです。そんな社会は優しくない」と語る中西さん。「私にとっては曲がったり傷ついたりしているお花も一生懸命に咲いていて愛おしくてしょうがないんです」とつぶやく一言に、「ippo」の商品から感じられる温かさ、愛らしさ、優しさの源流を見ました。

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