おいしいのは当たり前、パンを通して幸せな気持ちを届けたい

フレッシュベーカリー プリモ
福岡県久留米市宮ノ陣4-3-27
■代表者: 小石 康博
■創業: 令和2年8月25日
 
■TEL: 080-9359-9931

人材サービス事業を経て、パン職人として独立

久留米市・宮の陣駅近くの閑静な住宅街に、2020年8月にオープンした「フレッシュベーカリープリモ」(以下、「プリモ」)。日本国内では輸入小麦粉を使うベーカリーが95%を占めるなか、「プリモ」では国産小麦を使い、無添加生地のパンを毎日35~40種ほど店頭に並べる。また、お客様がいつ来店してもあつあつの焼きたてパンが買えるように、毎日開店前から16時くらいまでパンを焼き続けている。
店主の小石康博さんは、異業種からベーカリー業界に参入した。実家が自営業を営んでいたこともあって、サラリーマンとして働きながらも、いつかは独立したいと考えていたという。大学卒業後は広告業界に飛び込み、のちに人材サービスの会社で営業部長や支社長を経験しながら、起業関係のセミナーに参加し構想を温める日々。その後、人材サービス業や研修事業を手がける会社の立ち上げから関わり、取締役まで務めたが、どうしても自分で事業を運営したいという気持ちが強かった。
そんな想いがついに実を結ぶ。ベーカリーの開業支援を行う企業を知り、パン職人として起業しようとするべく、人生の舵を大きく切ったのだ。

コロナ禍を乗り越えて開業

自ら店を経営するなら地元の佐賀県鳥栖市近辺がいい、と考えた小石さんは、物件を探し始める。条件は住宅地にあり、1階で営業でき、駐車場があること。30~40ヵ所を検討し、残ったのは1ヵ所、それが久留米市宮の陣駅近くの物件だった。徒歩圏内に保育園や幼稚園が4ヵ所あり、ターゲット層である家族連れやシニア層も多いエリアだ。
2020年に入り、物件の決定とともに、什器の手配や融資の相談を同時進行で進めた。当初、融資は民間の融資仲介企業と話をしていたが、時は3月、ちょうど新型コロナウイルスが隆盛し始めた頃だった。融資が下りるかわからない状況に陥り、小石さんは慌てて公的機関に相談する。最初に久留米市役所に話を聞いたところ、「創業塾」を教えてもらった。ただ、久留米市内では実施されていなかったため、田主丸町商工会を紹介されたという。電話で連絡を取りながら創業計画書を策定し、2020年8月に無事、「フレッシュベーカリープリモ」がオープンした。
開店して1周年を迎えた今、毎日が数字と自分との戦いだが、「やりがいがある」と小石さんは言う。「労働時間が長く、準備にも時間がかかりますが、売れると達成感があります。もっと早くに開業しておけばよかったと思うくらい、今は毎日が面白いですね」。




田主丸町商工会の創業支援で助かったことは?

“伴走型支援”だったこと
2018年に起業しようと決め、それまで働いていた会社の業務を整理したり引き継いだりしながら、退職するのに1年半かかりました。その後、パン職人の修行をして、開業に向けて実際に動き始めたのが2019年の秋以降です。物件を決め、融資の話を進めていたさなかにコロナ禍が直撃して、「これはまずい」と焦りました。そんな2020年3月に出会った田主丸町商工会の担当者が、さまざまな企業の創業を手伝っていらっしゃったこと、そして田主丸町の創業支援が“伴走型”だったことに心が引かれました。新しく事業をスタートしようとしている私たちに、伴走しながら手助けしてくれるのは、とても心強かったしありがたかったです。

創業計画書はどのようにつくりましたか?

商圏分析やターゲット層の設定などこまかくつくり込む
これから長きに渡って自ら事業を行っていくため、創業計画書は綿密に調べ、考え、作りあげました。立地分析、商圏分析、市場分析、競合他社の調査、店舗のコンセプト、ターゲット層の設定、商品構成、販促、販売計画、収支計画などを盛り込んでいます。計画書の作成は、通常であれば対面でサポートしていただくのですが、私が当初は兵庫県神戸市に住んでいたため、メールや電話で支援していただきました。1カ月ほど遠隔で進め、実際に担当者と会えたのが4月。そして5月に私が九州に戻ってきました。
当時、パンをつくるのに欠かせない機械が手に入るかどうかの問題や賃貸契約、工事の調整、融資の手続きと様々なことが重なっていて、「起業はこんなにもしんどい道のりなんだ」と思ったものです。商工会に支援してもらっての今があると思います。

支援を受けて良かったこと、そして現在の運営について

自分で自分の店をスタートできたことに尽きる
 支援がなければここまでできませんでしたし、私一人では多岐にわたる問題を解決出来なかったと感じます。商工会にある、創業にまつわる経験や知恵をお借りできたのが良かったことです。
オープンしてからは、想定したターゲット層が来店してくださっています。85%が女性で、Instagramをフォローしてくださっているのは20~40代が多く、LINEの登録者は30~40%が50代以上です。商品構成では、当初はカレーパンやパニーニが売れていましたが、塩バターロールをアピールしたところ、今では塩バターロール、あん塩バターロールが人気の1位、2位を占めています。もちろん想定したより売れなかったパンもあって、毎回が試行錯誤の連続です。10回のうち1回でもヒットすればと、月ごとに季節のパンや新商品などを提供しています。今後は50歳までに3店舗展開が目標です。

スタッフ自らが考え、動く店づくり

「プリモ」の強みは、安心できる国産小麦を使った無添加生地の焼きたてパン、だけではない。スタッフのコミュニケーション力も店を大きく支えている。店内ではおすすめのパンや焼きたてパンについてこまめに知らせ、帰るお客様には「午後のお仕事も頑張ってくださいね」「帰り道、気をつけてくださいね」などとスタッフが声かけをする。
定番の「またお越しください」は「また来てほしい」という店側の思いを伝える言葉。だからこそ、その言葉はあまり使わず、スタッフそれぞれがお客様のことを考えてメッセージを伝えるという。そのほか、お客様の手助けもスタッフが自発的に行うそうで、「スタッフそれぞれのファンづくりに繋がれば」と小石さんは言う。これまで組織づくりやマネージメントに携わってきた小石さんらしい、店づくりの手法だ。
「おいしいパンをつくるのは当たり前。お店に来てもらうことでお客様がちょっとでも元気になるように」と、「プリモ」は今日もパンを通してお客様に温かい気遣いや幸せな気持ちを届けている。

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