30年間で培った提案力を生かし神社の課題解決に挑む
- 株式会社ドーバー商事
- 久留米市山川追分2丁目2番23号
- ■代表者: 田中 剛
- ■創業: 2025年3月5日
事業内容
真榊や胡床などの神具、絵馬や木札など神社の授与品を扱う卸売業として、、株式会社ドーバー商事は2025年3月に創業。神社で用いられる木製品を中心に、一つひとつの要望に向き合いながら事業を進めている。
*真榊:祭壇の左右に立てる祭具/胡床:脚を交差させて折り畳める椅子
About us 会社概要
ベッドメーカーの営業職から異業種に飛び込む
国内大手のベッドメーカーで約20年間勤務してきた田中さんは、福祉用具の専門相談員として病院や福祉施設、高齢者が抱える課題解決に携わり、営業所長としてマネジメントにも関わってきました。社会的意義を感じながら充実した仕事に取り組む一方で、「いつかは独立したい」という思いを長く抱いていました。福祉用具のノウハウを生かした起業も考えましたが、既に多くの競合企業がしのぎを削っている現状もありなかなか勝算が見出せませんでした。
独立を視野に入れつつ父が営んでいた食品卸売会社に転職し、業務を通じて木製品の取り扱いや流通の現場に触れる機会を得ました。その経験を重ねるなかで、木という素材が持つ力や、長く大切に使われる道具の価値に改めて気づかされ、神社で使われる絵馬や木札といった授与品の世界へと関心を深めていきました。
提案を重ね、信頼を得るまでに2年
創業前は神社とのご縁も乏しく、どこから・どのような提案が求められているのか分からない状態からのスタートでした。授与品や神具が、神社とのご縁の中で用いられていることを知り、少しずつ提案の機会をいただくようになりました。
「こんなものは作れるか」「こういうものは用意できないか」といった問いに一つずつ応えながら提案を重ね、信頼を得るまでには2年ほどの時間を要しましたが、少しずつ注文をいただけるようになりました。神社や関係先とのやり取りを通じて感じたのは、形式や価格ではなく、「相手の困りごとを受け止め、丁寧に応える姿勢」が何より大切だということでした。
食品卸売会社の神具木製品部門として営業を続けていましたが、取引額や納めるアイテムが増えていくと、「独立」の思いが再び大きくなってきました。「神具という分野は、表立って語られることは多くありませんが、長い歴史の中で大切に受け継がれてきた世界だと感じました。その一端を担う仕事として、腰を据えて取り組んでいきたいと考え、独立を決意しました」。
Founding 創業計画
・田主丸町商工会への相談のきっかけ
創業を具体的に考え始めた時に「一人で悩むより専門家に相談した方がよい」と考え、久留米市の創業支援施設「くるめ創業ロケット」を訪ねました。そこで田主丸町商工会を紹介してもらい訪問、中小企業診断士の面談を受けました。
・創業に向けて受けた支援内容
2024年8月に指導員および中小企業診断士から「経営」「財務」「販路開拓」「人材育成」について学ぶ4日間の創業支援塾を受講。特定創業者として認定されました。「2年分の売上予測と経費予測を出して、どの程度の利益が出るのか中小企業診断士の先生と一緒に考える機会が持てたことで、具体的に事業戦略を練ることができました」。
・創業計画書を提出して受けた融資の使途
神具の初期仕入れ代金に充てたほか、自宅の一室を事務所にすることに伴う改装費、備品購入、商品を保管するため倉庫の賃貸料の支払いなどに活用しました。
Future その後の展開と未来への展望
営業の本質はベッドも神具も同じ
神社や関係先との取引は、信頼関係を築くまでに時間を要しましたが、やり取りを重ねる中で、さまざまなご相談や要望をいただくようになりました。
「最初は相手のニーズも分かりませんから、手探りで『こんなのどうですか』『こういうのもありますよ』という提案しかできません。それを繰り返していくと相手から『こういうものが作れないか』などと尋ねられるようになります。
その要望に応えていくと今度は向こうから『こういうことで困っている』と相談されるようになります。ベッドメーカーの時と同じようなステップを踏んでいくことが分かり、営業の本質を見た気がしました」。
取引先の課題を受け止め、本質をつかみ、付加価値をつけて提案する。こうした一連の活動では、ベッドメーカーで培った経験・ノウハウが存分に生かされました。木製品を扱うメーカーや加工事業者、組み立てを担う事業所など、さまざまな関係先と連携しながら体制を整えています。
「各社の持つリソースを組み合わせることで、新しい価値を提供できる」と田中さんは考えています。
業容拡大に2つの目標
今後については大きく二つの目標があります。一つ目は、神社や関係先との取引でいただくご相談や要望に丁寧に応え、変化する環境にも柔軟に対応できる体制づくりを進めていくことです。
もう一つは、新たな需要や市場の動きを丁寧に見極め、寺院向けの木製品など異なる分野での提案の可能性を探ることです。金剛杖や卒塔婆、護摩木*といった木製品には広がりが期待でき、事業の幅を少しずつ広げていく方針です。
社名には「ドーバー海峡を泳いで横断する」という田中さんの夢が込められています。
海や川などで行われる長距離水泳競技「オープンウォータースイムサーキット」では2023年度、2025年度に50代の部で全国2位の実績があり、「決して夢物語とは思っていません」。事業の成功と夢の実現をもって、「おじさんでも夢を追求できるというメッセージを伝えたい」と田中さん。ビジネスでも趣味の世界でも未知の大海を泳ぎ切るつもりです。
*護摩祈願で炎の中にくべられる、願い事を書いた木札