ドローンによる苗木運搬 ICTで林業の省力化に挑む

株式会社Arbre
久留米市田主丸町田主丸373-12
■代表者: 梶原由紀恵
■創業: 2025年2月19日
 
■TEL: 080-8550-7219

事業内容

林業従事者向けに苗木を植林地までドローンで運搬するサービスを計画中。人が苗木を運ぶ場合と比べて大幅な作業効率化が見込まれるほか、滑落事故防止など安全確保にもつながるものとして期待されている。

About us 会社概要

林業従事者の負担減・安全性向上を目指して
建設会社などで勤務してきた梶原さんは結婚後、福岡県認定事業主として素材生産(伐採した樹木を指定されたサイズに加工して市場に納品する事業)を営むご主人の下で林業に従事してきました。森林管理者は樹木の伐採後、元の状態に自然回復しない場合は苗木を植栽することが義務づけられています。苗木を運ぶ際、車両が通行できる道がなければ人が担いで斜面を上ることになるため身体的負荷が大きく、一度に運ぶ本数も限られるため作業効率もよくありません。梶原さんの会社は伐採だけを受託しているため苗木を運搬することはありませんが、苗木運搬中に滑落事故が発生していることは耳にしていました。近年は業務用ドローンの性能も向上し、各業界で活用されています。梶原さんも案内を受けてドローンのセミナーを受講し、その可能性を目の当たりにしました。一方で、九州の林業関係者の間ではドローンがほとんど活用されていません。「ドローンで苗木運搬ができれば、植林事業者に喜ばれるのではないか」。そう考えた梶原さんはご主人に相談し、新たに会社を立ち上げてドローンによる苗木運搬サービスを始めることにしました。

ドローン操縦の国家資格取得を目指す
目視外の場所にドローンで運搬する際は発着地点と荷下ろし地点に操縦者を配置する「2オペレーション方式」が一般的であるため、少なくとも二人のスタッフが必要になります。このためご主人の会社から社員2人を移籍させて2025年2月に株式会社Voler(フランス語で「飛ぶ」の意味)を設立しました。人が1日に苗木を運べる量は10kg程度(約50本)と言われるのに対し、最新型のドローンは1回の飛行で最大30㎏まで積載できるため、大幅な作業時間の短縮が見込まれます。梶原さんは伐採や植林の依頼元となる森林組合や木材市場、福岡県庁の関係部署と人的ネットワークがあり、社員のうち1人は森林組合の勤務経験者。サービス開始後の営業・周知活動も問題なく行えそうです。今後は金融機関から融資を受けてドローンを購入する予定で、融資の申し込みと並行してドローンの操縦講習の受講、さらに国家資格である「無人航空機操縦士」の取得を目指しています。




Founding 創業計画

・田主丸町商工会への相談のきっかけ
ご主人の会社を通して商工会とはつながりがありました。自らの創業を考えた際、自宅から最寄りの商工会である田主丸町商工会に会社設立について相談に行きました。

・創業に向けて受けた支援内容
指導員および中小企業診断士から「経営」「財務」「販路開拓」「人材育成」について学ぶ4日間のカリキュラムを受講。特定創業者として認定されました。指導を受けて作成した創業計画書をもとに、今後は金融機関への融資申請に向けた支援を仰いでいきます。

・創業計画書を提出して受けた融資の使途
融資の申請はこれからですが、融資が下りた後は業務用ドローンの購入費、国家資格である「無人航空機操縦士」の取得に必要な講習費、運転資金に充てる予定です。ドローン操縦に資格は必須ではありませんが、2022年12月からドローンの国家資格制度がスタートし、資格を持っていればドローンを飛ばせる範囲が広がるほか、申請や許可の手間が省けるケースもあるため取得を目指します。

Future その後の展開と未来への展望

測量・伐採など森林管理の受託も視野
ここ数年は多くの業界で人手不足が指摘されていますが、林業も例外ではありません。2019年に「森林経営管理制度」が導入されたことも人手不足に拍車をかけています。この制度は、管理の行き届いていない森林があれば市町村が所有者から委託を受けて、素材生産に適していると判断された場合は測量・伐採・植林などを林業事業者に再委託、それ以外の森林は市町村が管理するというものです。これにより、市町村から森林管理に関する業務委託の件数も増えています。これまで市町村は森林組合などに測量・伐採・植林などを依頼していましたが、森林組合でも人手不足が顚著になっており対応に苦慮しています。このためご主人の会社で伐採に従事してきた梶原さんも、ドローンを使った苗木搬送に加えて測量・伐採・下刈り(苗木の成長を妨げる雑草や灌木を刈り払う作業)など森林管理に関する一連の業務の受託も視野に入れています。

九州で林業ICT化の先陣を切る
2025年7月には会社の事業目的に林業を加え、あわせて社名もフランス語で「樹木」を意味する株式会社Arbre(アルブル)に変更。すでに伐採の委託も受けています。測量業務でも効率化・省力化を目指しており、衛星測位システムを活用する「GNSS測量」の導入を検討しています。従来は二人一組となって測定器を移動させながら計測してきましたが、GNSS測量では受信機を持って歩くだけで位置情報を取得できるため、作業の効率化が図れます。「ドローンによる苗木運搬だけでなく、GNSS測量を本格導入している林業従事者は九州ではほとんどいません。ICTを活用することで林業の効率化・省力化を図り、高齢化が進む九州の林業を少しでも支えることができればと考えています」。将来はドローンを使った農薬の散布や建設現場への資材搬送など、林業以外への事業参入も考えているという梶原さん。九州における林業の新たなモデルケース構築を目指す挑戦が、いよいよ始まります。