造園は夢仕事。“癒しの空間造り”を一途に追求
中古住宅を和モダンへと変貌させる、自然木を配した庭

株式会社万代園
福岡県久留米市田主丸町恵利474-1
■代表者: 中野 武俊 / 内藤 寿成
■創業: 昭和63年10月13日
■計画承認日: 平成29年3月31日
 
■TEL: 0943-72-0303
■FAX: 0943-73-0077

小さな信頼を積み重ね、会社も人も成長する

「庭づくりは緑の癒しの空間造り」をモットーとする「万代園」は、昭和40年に個人創業した後、昭和63年に法人化。社長の中野さんは創業以来53年もの長きに渡り、誠実な仕事を心がけ、品質第一を貫いてきた。バブル時には田主丸の植木も売れに売れたが、「売れば利益になる」という考えではなく、「作ったものを評価していただく」という信念を曲げなかった。
中野さん曰く、「信用というのは会社の利益。お金だけが利益じゃない」。事実、業界トップクラスを誇る大手住宅メーカーとの付き合いも、先方担当者との信頼関係から始まった。住宅メーカーの下請けとして、住宅外構を含めた造園・ガーデン設計施工などを受注すること約40年。現在、社長はこのメーカーにおける、全国施工店会の会長を13年連続で務めている。
さらに職人たちの技術が磨かれた結果、公園整備や街路樹管理といった大規模な公共工事も受注するまでに。久留米市の東部運動公園、田主丸町の大塚古墳歴史公園、久留米津福公園など、豊富な実績を持つ。地元の自治体からコンスタントに仕事を依頼されるなど、公共工事における信頼も厚い。
成長を続ける「万代園」に魅力を感じ、都心部からUターンしてくる転職組も。造園業界全体が人手不足に悩むなか、若手従業員が多いのも「万代園」の特長だ。
最近では大手住宅メーカーの下請けや公共工事だけでなく、個人住宅の造園などにも力を注ぐ。安定した経営ベースを保ちながら、新しい取り組みにチャレンジ。社長が築き上げてきた信頼と経験に、従業員の若い力がプラスされ、新事業への活力となっている。

取引先から社員まで、人との出会いがすべてをつくる

一期一会が成功へのキーワード
取引先である大手住宅メーカーは、社長にとって恩人のような存在。若かりし社長に、メーカーの担当者が営業から実務までを教えてくれた。この担当者をはじめ、周囲の人々の教えに謙虚に耳を傾け、コツコツと地道な努力を重ねた社長。その功績と人柄が認められ、13年前にはメーカーの全国施工店会の会長に抜擢された。じつは社長は今年、この大役を辞退するつもりだったが、東京本社よりメーカーの社長が足を運び、直々に協力要請があったと言う。
自分を育ててくれたメーカーに長年の実績と経験が認められたうえ、今ではメーカーに社長の深い見識が求められている。

社員が学び続ける好環境。技術の継承にも尽力
「万代園」の事務所の壁には、額に飾られた賞状が何枚も並んでいる。これらの賞状はすべて、社員が取得したもの。「社員には最高の資格を取ってほしい」と言う社長の想いに応え、造園技能士や土木施工管理の技能優秀士など、さまざまな資格や認定の取得に社員みんなが取り組んでいる。なかには民間の仕事と公共事業の双方における実績が認められ、個人として国土交通大臣表彰を受けた社員もいるほど。
人手不足により規模を縮小する造園会社もあるなか、「万代園」には若い従業員が多い。しかも造園関係でトップの大学を卒業した社員や、業界で3本指に入る会社から転職してきた社員など、優秀な人材に恵まれている。
現場で覚える実務とともに知識の習得も促し、若く優秀な社員への技術継承を行っている。




経営革新計画を策定してみようと思ったきっかけは?

ありがたいことに大手住宅メーカーの下請けや公共工事といった経営基盤はありますが、もっとちがう土俵でも頑張ってみたいと思ったんです。造園の基本は「個人の心の癒し」だと思っていますので、大きな事業ばかりではなく、もう一度基本に戻ろうというのがきっかけです。
またこの事業により、もう少し元請け比率をあげられればとも思っています。

経営革新計画の内容

Q. 新サービスの概要と、その新規性を教えてください。
「和の自然木を配した、和モダンのお庭の提案」です。
最近では庭木のニーズもずいぶん変わりました。昔のような、松やツツジを職人がきっちり剪定する純和風の庭づくりはあまり好まれません。今はコニファやドラセナといった木を使った、洋風のガーデニングが主流ですね。
しかし最近は田主丸でも空家問題が出てきており、中古物件の売買も多くなってきました。中古物件は和風の家が多いので、「和風の家に似合いつつ、最近の若い人の好みにも合う庭」にニーズがあるのではないかと考えたんです。そこで今回、30代〜40代の中古物件の購入者をターゲットに、「自然木を配した和モダンの庭」を提案することにしました。
今回の事業では、自然木としてモミジやカエデを想定しています。ただ、自然木というのは木の種類ではなく、自然の形になるように剪定された木のこと。自然の形を人の手で再現するわけですから、木がどのように成長するかを知っておかなければなりません。木の種類により切れる形や剪定できる時期が異なっているため、それらすべてを知っておかなくちゃいけない。さらに枝の1本1本を見ながら剪定するなど、自然木の剪定には通常の剪定より高い技術が必要とされます。
膨大な知識と高い技術が求められるため、「自然木を配した庭」は誰にでも造れるものではありません。自然木を使って庭造りをする業者はまだまだ少ないですしね。
難しいからこそ、今後はこの技術を会社全体で共有するなど、さらなる技術の継承を進めていきたいですね。

Q. 将来の展望は?
新事業により、直接顧客を開拓できると期待しています。
私たちは今まで、こだわりを持って仕事をしてきました。個人のお客さまに対しても、造園のプロとして言うべきことはちゃんと言っていきたい。お客さまのおっしゃることを無視するわけではなく、プロとしての目線をお客さまに伝えていきたいですね。ご要望に添えない場合は、その原因や代わりの方法を提案して、きちんと理解していただくように務める。それがひいてはお客さまからの信頼となり、長くお付き合いさせていただけるようになると思っています。
また、今回の事業で使う自然木って、説明するのがすごく難しいんですね。何も手を入れていない「あるがままの姿」に見えて、じつは高い剪定技術が必要っていうのは分かりにくい。うちには和風と洋風のそれぞれのモデル庭園がありますので、それを見て参考にしていただけたらと思っています。

経営革新計画を策定してみていかがでしたか?

Q. 策定期間中、どんな支援を受けましたか?
ちょうど、「このままじゃいけない」「何か新しいことをしなければ」と考えている時でした。商工会さんも情報源の一つとして、いろいろなアドバイスを受けながらやってきました。
専門家の先生には3回ほど来ていただきましたが、すべて自分一人で対応するのではなく、途中からは信頼できる社員も同席させるようにしました。
ビジネスやマネジメントという観点から、物事を判断できる人材を育てなければいけませんからね。商工会さんとの話し合いの場に同席させることで、経営面を磨いていければと思っています。

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庭造りは夢の体現。人々の“癒しの場”を創る
創業以来、「庭づくりは緑の癒しの空間造り」と思ってやってきました。庭は、人生における「心のはけ口」ではないかと感じることもあります。日々の生活で溜まったストレスや、行き場のない感情が、庭を見ていると癒されるのではないかと…。ですので事業としてがすべてではなく、個人的には「庭を見て、緑を見て、心を癒して欲しい」と思いながら、庭造りをしています。
「バカなことをしているな」「もっと楽な方法があるな」と思うこともありますが、宣伝もせずに今までやってこられたのは、地道にちゃんと仕事をしてきたからでしょうね。
私たちが作った庭を見て、みなさんが評価してくださったのだと思っています。

庭造りは、風雅へと続く道
庭造りは奥が深いんですよ。風流の世界なので、突き詰めても終わりがない。
例えば紅葉を楽しみたいなら、春一番に芽吹いた葉は一度摘むんです。硬くなった葉をとって、秋に新芽が出るようにする。そうするとこの柔らかい葉が色づいて、すごく良い色が出るわけです。
一般の家庭でここまですることはないけど、本当に紅葉を楽しむならこの方法なんですね。でも、こういう知識はあまり伝わってないんじゃないかな。
自然木の剪定にしても、何もしないことが自然なわけじゃない。カットしながら、いかに自然に見せるかが大事です。これも極めるのが難しい。
造園は、本当に深い世界です。「これで良い」と思ったら、そこでおしまいです。私も、実際に自分で庭をつくりながら悩んで、考えてきました。
庭造りでもビジネスにおいても、私の土俵は壊れないですよ。自分だけでがむしゃらに作りあげたわけではなく、みんなからノウハウをいただいて、みんなに作ってもらいましたから。どれだけ伝わるかはわかりませんが、これからは社員にもいろんな知識や経験を伝えていきたいですね。