植木に対する知識と愛情、そして技術が緑を育む

有限会社 福岡緑化情報センター
福岡県久留米市田主丸町豊城1856-5
■代表者: 福島 啓輔
■創業: 昭和51年7月30日
■計画承認日: 令和2年10月30日
 
■TEL: 0943-72-3362

希少性と品質にこだわって差別化を図る

「有限会社福岡緑化センター」は昭和51年に開業した植木卸販売業者である。長年培った植物の知識と育成技術には業界内からも一目置かれる存在だ。植物の命と真摯に向き合い、「植物の普及、および植木の町である田主丸町を復旧させたい」という使命感を持って、植物の仕入・販売、一部生産を行っている。
一見、同業他社で同じような植木を扱っているように見えるが、実は店舗や業者ごとにそれぞれの強みがあり、特徴がある。福岡緑化センターでは他社では取り扱わない珍しい品種の植物を取り扱ったり、屋外の畑で丁寧に育て上げた露地栽培の苗を販売したり、ここでしか手に入らない希少性と品質にこだわっている。

サイトを活用して個人客へピンポイント販売

さらに、取り扱い商品のセレクトだけでなく販売方法にも工夫がある。コロナ禍で売上の大部分を占めていた建設美観用植物の販売数が減少したことを機に、インターネットのオークションサイトとECサイトを活用し、個人向けDIY用植物の販売を開始した。個人へ直接販売することで利益率も上がり、売れ筋商品やトレンドなど顧客の反応がダイレクトに数字で表われるため、市場の動向調査にも役立つという。
これらの自社のホームページやECサイトの管理・運営を担当するのは、同社の代表取締役を務める福島啓輔さん。福島さんは前職でプログラム関係の仕事に従事しており、ITに関する知識が深い。その経験と知識を活かし、インターネットの販売戦略を立て運用を行っている。福島さんは「今後、コロナ禍の危機を脱したとしても売上構成比の中でもっとも利益率が低い建設美観用植物(売上構成比70%に対して利益率30%)の販売に依存したままでは、これ以上の成長は見込めません。オークションサイトやECサイトを介して、高い利益率が見込める個人向けの直販方に力を入れるなど、利益の確保が必要です」と語る。




経営革新計画に係る補助金活用について教えてください。

樹木の管理における生産効率を向上させるラジコン動力噴霧器の購入や自社生産用農地の整地費用、そしてホームページの運用費用やECサイトの制作費などです。インターネット販売は、まずはオークションサイトやECサイトでDIYや家庭内園芸に関心のある個人客に対して観賞用・植栽用植物の販売を行います。既存商品を販売しながら、売れ筋商品のリサーチを行い、量産化する商品の検討を行っていく予定です。利益率が高い個人への直販サイトを構築することで、安定した利益確保に期待しています。システムの構築やアクセス解析など、前職で培ったITの知識が役に立っています!

どんな植木が人気ですか?

店頭では九州では栽培されていない品種の植木、インターネットでは通常の流通では市場に並ばないようなちょっと個性的な枝ぶりの植木が人気です。植木は同じ品種でも育てる人や剪定によって、全く異なった姿に成長します。それが植木を育てる魅力でもあり、職人として技術が問われるところです。
私たちが畑で丹精込めて育てた植木は、職人の技で根を傷つけずに掘り上げます。これも職人の技の見せ所です。上手に掘り上げられた苗は、根が張りやすく丈夫に育ちます。弊社の植木を購入された方にリピーターが多いのは、私たちの植木に対する熱い想いとともに植木職人の技術が評価されているからだと思っています。

未来の森林を守る活動にも注力

福島さんは、「一般社団法人日本植木協会」の青年部会部会長を務めており、森林保全活動や植木に関わる全国の生産・流通・販売の業者のパイプ役として活躍中だ。福島さんは「植木業界も時代のニーズに合わせて、様々なチャレンジをしていかなければ業界全体が衰退してしまう」と危惧する。今、青年部会では子どもたちにも植木に興味を持ってもらうために「緑育キット」を配布して出張授業を行うなど、植木を身近に感じてもらう緑育活動も行なっている。
「植木で商売をさせていただくということは、未来の植木を守る義務もある。植木は育てながら販売をすることが大切」と、福島さん。仕入れた植物はそのまま販売する物と育てる物に分け、後者は約2年間手塩にかけて育てた後に販売をするという。福岡緑化情報センターでは現在、6,000㎡の自社生産用農地を9,000㎡に拡大させ、既存の業務用品種に加え一般販売向け品種の生産を行う計画がある。植木・苗木業が盛んな田主丸町では、業界の発展が地元の発展・貢献に直結する。同社が挑戦する植木のインターネット販売の試みは、田主丸町の植木業界に新たな希望を与えてくれるかもしれない。