「田主丸町で和食なら浄安」と思っていただける店へ

有限会社 カワハラ
久留米市田主丸町益生田694-1
■代表者: 河原 容子
■計画承認日: 2021年9月16日
 

事業内容

1977(昭和52)年に仕出し・鮮魚小売業として創業。1997(平成9)年に生家を改築して日本料理「浄安」をオープンし、田主丸町の法事・慶事には欠かせない料理店として多くのお客様が訪れている。2013(平成25)年からは学校給食にも参入。

About us 会社概要

お客さんがいなくても、店を開けるという決断
木々に囲まれた静謐なたたずまいの玄関を入ると、目の前には田主丸町の素晴らしい眺望が広がる――1997年の開業以降、冠婚葬祭や観光で訪れる多くのお客様を迎えてきた、日本料理「浄安」。生え抜きの板前がつくる、季節それぞれの目にあでやかな料理は、味わう人の心をつかんできました。
しかし、あの2020年。「浄安」は窮地に立たされます。観光はキャンセル、海外からの予約ももちろんのことキャンセル。法事も慶事もほぼキャンセルという惨状のなか、女将の河原容子さんは、お客様がいなくても、店を開け続けるという選択肢を選びました。「3カ月、長くても半年で落ち着くだろうと考えていたのです。でも、なかなかコロナ禍は収束しませんでした。店を休業すると気が滅入りそうで、とりあえず店に出ていた状況です」。

何かしないと――新たな持ち帰り商品を開発
お客様は1人や2人。なかにはゼロの日もあったそうです。それでも、開けているからには食材を仕入れないといけない。河原さんはお客様からの「頑張って」という声を励みに、来店客のいない日は店をひたすら掃除し続けました。そして、板前さんと策を練ります。何か持ち帰りできる商品を、と「浄安」オリジナルの明太子、豚の角煮、シュウマイの開発に取りかかりました。
明太子は2020年6月から試作をはじめ、完成までは約半年。和風だしがしっかりときいた、まろやかな味わいが自慢です。豚の角煮は同年10月に商品化し、お客様からの声をもとに改善を続けました。そしてシュウマイ。たまたまテレビの取材を受けた時に、「店で出している手づくりのシュウマイを商品化する」と話したところ、多くのお客様が来店され、仕込みが間に合わないほどの反響がありました。これらの持ち帰り商品を安定的に提供するため、田主丸町商工会に相談して環境を整えることにしたのです。




Management Innovation 経営革新

●持ち帰り商品開発のきっかけ
「浄安」は最大で80人収容できる店舗規模だったのですが、コロナ禍で一気に1日1~2人という客数になってしまいました。あれだけお客様が来ない状況で何もせずにはいられませんでした。売れても売れなくても何かしなくては、という気持ちだったのです。

●経営革新申請書をつくり、行動が自信に
持ち帰り商品の開発が進み、商品化できるくらいのタイミングで田主丸町商工会に相談。そこから経営革新申請書を作成しました。思うだけではなく自ら行動を起こすことで自信になります。申請書を作成して「自分にもできるんだ」と感じました。また、今までのように経営を続ける中で、新しい方向性を模索するきっかけになりました。

●今後の展開
現在は明太子が定番商品化しました。県外から観光で来られた方が贈答品として購入されます。その他にも、今のご時世に合わせた、家での集まりに使える折り詰めも提供し始めました。意外にご要望が多いため、今後は折り詰めのカタログをつくって本格的に事業化する予定です。「浄安」のブランドを保ちつつ、お客様のご要望にお応えする方針です。

●お客様の動向
2022年9月時点で、お客様はまだ半分まで戻っていません。しかし、この先は法事やお宮参りのお祝いなど、予約も入ってきて光が見えています。また、集まりの規模も少しずつ大きくなってきていると感じます。

Future その後の展開と未来への展望

原動力は従業員とお客様
暗中模索した2020年。自分だけでなく従業員の生活を背負っていると考えると、「投げ出すわけにはいかなかった」と河原さんは言います。従業員、お客様…さまざまな人の生活に関わっていること、中には応援してくださる方がいらっしゃることが原動力でした。
そして、どのような状況でも、店を続けていくうえで最も大切なのは、料理のレベルを落とさないことだと言います。「とにかく料理で満足していただけるように、季節のものは意識してお出しし、良い食材があれば取り入れるなど、自由度の高いメニュー編成です」。

お客様から一番に選ばれる店に
そんなコロナ禍にあって喜ばしいこともありました。「初めて来た」「まだあってよかった」とおっしゃるお客様、以前と変わらず来てくださるお客様がいらっしゃったのです。目下の課題は、新しいお客様に向けた料理の提供。高齢で足が遠のく方もいれば、若い層が新たに来ることもあります。内容や価格など、一度見直す時期に来ていると河原さんは感じています。
そのうえで、「お客様が、食事はどこに行こうかと考えた時に、一番に浄安に行きたいと思ってもらいたい」と河原さん。店を続けていれば、大変なこともあるけれど、考えることもまた、楽しい。そう笑った河原さんの見つめる5年後、10年後はきっと、目指す未来が来るはずです。

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