丁寧につくられた「食」をストーリーごと伝えるメディアをスタート
- 河原農耕園
- 久留米市草野町草野827-1
- ■代表者: 河原 行宏
- ■計画承認日: 2023年7月31日
- ■TEL: 080-5201-3213
事業内容
2015年4月に祖父の土地を活用して新規就農。当初より農薬に頼らない農法で水稲(品種:ヒノヒカリ)を主力の商品として生産販売。収穫から販売までの加工も独自に手掛け、年間を通して米を籾付きのまま貯蔵し、注文を受けてから都度脱穀を行い、精米して配達・発送する。
About us 会社概要
丁寧に作られた農作物の味に衝撃を受けた日
2015年4月に夫婦二人で新規就農し、「河原農耕園」として水稲・露地野菜を中心に生産・販売を手掛けてきた河原行宏さん。母方の祖父が農業をなりわいとしていて、叔母や叔父が手伝っていたところを幼い頃から見ていたことも、農業を始める素地となったそうで「農地と農機が余っていたこともあり、これは使うしかないと思いました」。加えて、それまでの仕事で出会った“手間暇かけてつくられた味”に衝撃を受けたことも河原さんを後押しします。
就農以前は筑後地域雇用創造協議会/九州ちくご元気計画(厚生労働省の雇用創造事業)の推進員として、物産品等の企画・開発やそれに伴うデザイン開発、販売や情報発信などに携わり、各分野において実践的な知識・経験を得てきた河原さん。当時、農業関連の食に関する方々と知り合って最も興味をもったのは実はお茶だったと河原さんは言います。
八女の山奥、標高600メートルほどの矢部村は、冬は雪が降り、夏は霧が濃く、そのおかげで虫が少なく病気も入りにくいので、農薬を使わずにお茶を作っている農家さんがいました。ある日、農家さんに出してもらった一杯のお茶に、河原さんは「こんなに違うんだ」と驚きました。「ペットボトルのお茶しか飲んでなかったこともあり、既製品と一つひとつ手作業で思いを込めてつくられたものとの違いを改めて意識しました」。方法一つ変えるだけでも感動するものがつくれる……この思い出が就農の入り口となったのです。
おいしさと想いを届けるメディアを構築
丁寧につくられたもの、思いがこもったものの味の違いを実感して、自分でもそういったものづくりに関わってみたいと考えた河原さん。無農薬で米やほうれん草を栽培していた祖父の農地を活かして米(品種:ヒノヒカリ)を栽培し始めました。味や品質を上げるために、栽培方法や肥料の与え方など試行錯誤し、近年は品質において「1等」を取れており、結果を出せている手ごたえを感じています。
ただ、全国的にみると米の消費量が減少。さらに昨今では、大型台風や集中豪雨などの異常気象や災害が相次いでおり、農作物の栽培難易度が上がっています。現在の規模感では農業一本で収益を向上させていくことに限界を感じた河原さんは、自社商品(米など)の直接販売と並行して、他社の商品を仕入れ販売することにしました。また、「食」「暮らし」をテーマにした総合情報メディアサイトを立ち上げ、オリジナルのパッケージやラベル、商品リーフレットなどの開発も請け負う、デザインサービスをメニュー化することにしたのです。
Management Innovation 経営革新
経営革新計画で取り組むこと
お茶、塩、海苔など、お米に関連する商品の仕入れ販売を強化するほか、農産物を使った雑貨の開発、ハラペーニョのピクルスなどの商品展開を計画しています。そのためにも、食と暮らしをテーマにした総合情報メディアサイトを構築し、商品の背景やつくり手の想いを伝えたいと考えています。
進捗状況
「お茶」のブランド化を進めています。現状、オリジナルのパッケージがないお茶販売店が多く、良い商品であっても普通の八女茶と見え方があまり変わりません。妻がグラフィックデザイナーなので、そのスキルと経験を活かして、パッケージやリーフレットをつくり、販売促進を図る予定です。また、商工会で話をさせていただいた中小企業診断士の方から仕事の紹介を受けて、冷凍餃子のパッケージづくりを進めているところです。
「河原農耕園」の優位性
メディアを通して、商品の背景や作り手の想いを消費者にしっかりと紹介できる他、商品のパッケージまで自社でつくることができるため、ブランド化をサポートできると思います。企業として、というよりも、あくまでも一般人の感覚で、友達におすすめするように親しみを持ってもらえるメディアを目指したい。
Future その後の展開と未来への展望
ECサイトで「おいしい」を消費者に直接届ける
河原農耕園のお米は、先述した通り、「1等」に認定される自慢の味わいです。ただ、いくらおいしくても籾(もみ)を脱穀してしまうと、味わいはどんどん落ちていきます。「籾の状態で貯蔵しておき、注文を受けて発送する直前に精米してるので、小売店には置けない売り方をしているんです」と河原さん。自社の商品を販売するうえでも、メディアサイトを経由した直接販売は有効だと考えています。さらに、自社のお米を使った開発中の米粉や、全国からセレクトしてきたお米に関する商品を販売したいと計画を進めています。
現在は沖縄の「もちきび」を取り扱うべく、交渉中だとか。スーパーやドラッグストアなど近隣の店では八種雑穀米や16種雑穀米などのミックスされたものは売っているものの、もちきび単体や、黒米単体はあまり売られていません。調べると、沖縄の3つの島でもちきびが生産されているとわかり、連絡をとったのだそうです。こうやって一つ一つ作り手と話し合いながら、取扱商品を増やしていく予定です。
ECサイトで「おいしい」を消費者に直接届ける
さらに、河原さんには「アーティストとコラボしたい」という目標もあります。とある音楽のレーベルが地元の産品とコラボして、オリジナルのパッケージで販売しており、「別ジャンルとのコラボだと、若い世代にもアプローチしやすいと思うんです」と河原さん。ギフト商品は著名なイラストレーターさんとタッグを組んで、特別なパッケージに仕上げることも考えているのだとか。
自社の商品や取扱商品が増えた暁には、海外との取引も夢ではありません。そしてゆくゆくは海外への輸出も――福岡、九州、そして日本の「おいしい」を世界へ広げていく活動は今、始まったばかりです。