独自開発したセサミオイルの持つ力を広め、スリランカの雇用・教育をサポート

LANKA 株式会社
福岡県久留米市田主丸町石垣1365-6
■代表者: 秋山 恵利
■創業: 平成19年5月21日
               
■補助金採択日: 令和2年7月22日
■TEL: 0943-72-3800

長年の悩みに光が見えたセサミオイル

スリランカで無農薬・無化学肥料栽培されたゴマを、じっくり時間をかけ低温圧搾したセサミオイル。日本国内でも類を見ないほど手間暇をかけたこのセサミオイルを輸入し、加工・販売する化粧品メーカーが「LANKA(ランカ)株式会社」だ。柱となるセサミオイルは、肌に悩みを持つ人や糖尿病患者などからクチコミで広がり、今や全国に多くのファンがいる。
もともとスリランカとは貿易で関わっていたという「LANKA株式会社」代表の秋山恵利さん。その縁もあって、ある機械関係企業の方々とスリランカの素材を使った飲料製品の開発に乗り出したが、計画は頓挫。計画の途中で発生したオイルの輸入権を、秋山さんが獲得することになる。「もともと皮膚が弱くて、セサミオイルを使ってみたらとても良かったんです」と秋山さん。その後、現地の大学と提携し、成分データ・使用データを分析、独自に高品質なセサミオイルの開発を手がけることになった。

セサミオイルに秘められたパワー
セサミオイルの歴史を辿ると、海外では紀元前から薬効のあるオイル=薬品として使われてきた。日本のゴマとは全く違う、乾燥したサバンナでしか育たない原種のゴマを低温で処理し、漢方薬を漬け込むといった使い方をしていたという。このセサミオイルを開発するため、秋山さんは世界三大医学の一つと言われるインド・スリランカ発祥の「アーユルヴェーダ」の大学で講義を受けた。目指したのは、人間の根本的な治癒力を高めるオイルだった。

10年以上かかった商品開発

納得のいくオイルに辿り着くまでは、一筋縄ではいかなかった。一般的なオイルと違って、アーユルヴェーダでは、種まで含めてすべての成分を壊さないようにオイルをとらなくてはならない。しかも、熱が加わったり金属に触れたりすると、成分が変化してしまう。現地のアーユルヴェーダ大学の先生と協力し、さまざまな圧搾方法を試みた。
この温度がネックで、低温のまま搾る方法を模索し続け、いつしか5年の月日が経つ。結果、15℃以上にならないように石臼でゆっくりと挽く、昔ながらの低温圧搾を選んだ。同時に、海外のイベントや展示会に出品するときはエビデンスが重要になるため、大学と共同で研究も進める。1990年代から開発スタートして早10年以上、ようやく2007年に「スリランカのセサミオイル」発売にこぎつけた。

LANKAにしかできない高品質なオイル
秋山さんは「こんなに手間暇のかかったオイルを使っている化粧品メーカーは他にないのでは」と話す。完全無農薬でゴマを栽培して低温圧搾でオイルにするために、圧搾まではスリランカで加工。それを輸入して、日本国内でクリームや石けん、化粧水などに商品化している。世界的に有名な大学と提携して品質を保証してもらい、ハラール認証も取得した。この努力が商品の質とお客様からの信用につながっている。




補助金を申請したきっかけは?

コロナ禍をきっかけに補助金で店舗を拡大
これまで商品の販促・流通は代理店にお任せしていて、対面販売は工場に併設された、お客様が2~3人も入ればいっぱいになってしまう小さな売店のみでした。ちょうど店舗を拡大しようと計画していたときにコロナ禍も直撃、ますます空間の広い店舗の必要性を感じ、田主丸町商工会に相談したんです。申請書を作成してもらって補助金を申請し、支給された補助金は店舗の改装やECサイトのリニューアルにあてています。
以前は3坪くらいだった店舗も、改装後は8坪程度に拡大。これまでは外から店内が見えづらく、そもそも店なのかもわからないくらいでしたが、今は窓を大きくとり、看板も設置したこともあり、来店客数も5倍に増えました。「インスタを見てきた」という20代から高齢者層まで、幅広い年齢層のお客様がいらっしゃっています。さらに改装と同時に決済システムを入れキャッシュレス化し、お客様からは「買いやすい」と好評です。以前とは違い、この店がお客様にとっても憩いの場になっていると感じます。

ECサイトを始めて売上の変化は?

Webからの注文増、B to Cの顧客が全国に
補助金でHPもつくりかえ、お客様に直接販売できるECサイトを始めたところ、全国各地から注文が入るようになり、販路を自ら開拓できました。これまでお客様に直接販売していたのは店舗のみだったので、遠くても九州圏内の方々ばかりでしたが、今は北海道のお客様もいらっしゃいます。しかも、7,000円以上は送料無料(北海道・沖縄を除く)にしているからか、まとまった金額で購入してくださる方もいて、嬉しく思っています。
 店舗、HP、ECサイトと販売環境を整えたところ、コロナ禍にも関わらず、売上が伸びてきているところです。この社会情勢のなか、ありがたいことです。しかも、スリランカの風景に似た、田主丸の豊かな自然の中で働けて、暮らしていける。以前より幸せ度は上がっています。
今後は、敷地内に子どもたちが遊べるエリアをつくる予定です。スリランカのように、直射日光を避けて安全に遊べるような公園になればと計画しています。その時はまた、田主丸町商工会に相談してアドバイスなどをいただく予定です。

コロナ禍をきっかけに始めた事業は?

災害備蓄用レスキュー缶を開発・販売
補助金をもとに、with コロナの時代に合わせた新規事業もスタートしました。LANKAを創業する以前から手がけていた、飲料ブランド向けの充填機や検査機製作の技術を活かし、災害備蓄用の「レスキューご飯」を開発・販売しています。田主丸一帯は農業が盛んな地域なのですが、需要と供給の関係から出荷されずに廃棄される食材も多くありました。そこで、農家の方々と一緒に、ご飯の缶詰をつくったのです。
長期保存には、缶詰内の酸素量を限界まで低くすることが必要です。わたしたちにはこれまで培ってきた経験から、大手メーカーにも実現できないほど低レベルの酸素量で缶詰をつくる技術がありました。開発・試験に5年を費やし、5~10年と長期保存が可能な缶詰が完成しました。LANKAの店舗内に自動販売機を設置し、災害時には無料で配布できるようにしています。また、この開発をきっかけに、他の企業や農家さんとの事業も始まっています。

商品づくりを通して現地の暮らしをサポート

創業当時はオイル、クリーム、石けんの3種だった商品も、今はさまざまな香りや素材を加えてバリエーションが広がっている。さらに、お客様が増えるにしたがって、「赤ちゃんの肌に使ってみた」「風邪の時にうがいをしてみた」といった、思わぬ使い方をお客様から教えてもらうこともあるという。セサミオイルにますます可能性を感じる出来事だ。
LANKAで商品づくりと同じくらい大事にしているのが、スリランカの雇用と教育である。まだスリランカが内戦時代にあった頃から現地に足を運んでいた秋山さんは、子どもたちの学習環境に心を痛めていた。黒板どころか、鉛筆すら一本もなく、学校に通えないまま働いている子どもがたくさんいた。「お金じゃなくて、食べ物をあげてほしい。お金はつかうところがないから」と言われた時代だ。だからこそ、情勢が落ち着いた今も、雇用と教育には強い関心を持っている。
品質のためだけでなく、現地でセサミオイルを生産することは、雇用を生み出し、働いている女性の子どもが学校に通える機会を創出する。商品づくりを通し、現地の大学からの協力を得て、これからもスリランカに暮らす人々へのサポートは続く。

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