生産者と共に作る農機、共に創る地域の未来… 農業者の声を随所に活かした、唯一無二の農機で勝負

株式会社 たなか
福岡県久留米市田主丸町秋成580-1
■代表者: 田中 久敬
■創業: 平成9年1月7日
               
■補助金採択日: 平成29年3月17日
■TEL: 0943-72-2148
             
■支援内容: 小規模事業者持続化補助金

農機メーカーの激戦区で奮闘!地元に根ざした事業経営

久留米市田主丸町を中心に、農機具の販売を行う「株式会社 たなか」。
近年、農業の衰退が叫ばれて久しいが、ここ田主丸地区は果樹苗木や葉物野菜の専業農家が多く、後継者にも恵まれている。県内でも有数の農業が盛んな土地と言えるが、そのぶん農機具を扱う競合他社も多い。町を横貫する国道210号線は「農機具銀座」の異名をもち、大手ディーラーや個人店、JA農機センターなどが点在する。
「農機具銀座」の一角をなす「たなか」では、他社との差別化を図るべく、事業を多角的に展開。米麦関連の農機具販売をはじめ、果樹苗木に特化した機械の開発・販売、中古農機の販売など、事業を3本柱で展開している。
なかでも果樹苗木に特化した機械の開発は、地元・田主丸に根ざした事業者ならではの取り組み。田主丸は果樹苗木の生産が日本一で、みかんの苗木に至っては全国生産の8割を占める。果樹苗木用の機械は田主丸での需要は高いが、全国的に見ればニッチな市場。大手メーカーにとって魅力的とは言いがたい。しかし、地元生産者の要望を受け「たなか」が開発した「果樹苗木用掘取機」は、地元での販売台数が100台を突破。東北や関東、関西からも注文が入るヒット商品となっている。
また中古農機の販売に関しては、仕入れた中古農機を自社で完全に分解して洗浄、整備を施して出荷する。通常は仕入れたまま販売する業者が多く、ここまで手を掛けることはほとんどない。中古農機を卸しているJAからは「たなかさんの中古農機は安心して売れる」とのお墨付きを得るなど、丁寧な仕事ぶりに対する評価も高い。

生産者ファーストの“誠実な”商売

商品開発の原点は、生産者グループとの信頼関係にあり
地元で頑張る若手の苗木生産者グループ「福岡苗木研究会」との付き合いは、今年でなんと18年。研究会の会合には必ず出席し、意見の交換などに努めてきた。会合では「こういう機械が欲しい」「既存の機械にはこういう点が不足している」など、使用者ならではのアイデアをもらうことも多い。
新しい機械を開発する際も、農業者目線のコンセプトを重視。製作の段階で試作機を実際に使ってもらい、使用した感想や意見を現場にフィードバック、さらなる改善を重ねていく。こうして農業者の意見が随所に活かされた、「たなか」ならではの機械ができあがる。
18年の長きに渡り培われてきた苗木生産者との信頼関係は、会社の貴重な財産。ここで習得した特定の作物に対する絶対的な技術とノウハウが、他社との差別化に役立っている。

半年保証が自信の証!完全整備で中古農機を蘇らせる
通常、中古農機を扱う会社は「仕入れて売る」のが仕事。しかし「たなか」では、仕入れた中古農機を一旦すべて分解、洗浄(磨き)、消耗部品の交換、塗装、組み立てまでして販売する。
このような業者は少ないが、こちらでは「中古農機にトラブルは付き物」という先代の言葉を教訓に、決して手を抜くことはない。
農機具は土の中で使うため、見えない場所に傷や劣化があることが多い。そのため仕入れの際には九州外まで足を運び、自分の目で実物を見て仕入れている。販売に際してもネットではなく、「見て納得して購入してほしい」と、対面販売が基本。
自社で完全整備を施し、半年保証をつけるなど、誠意のある販売姿勢を貫いている。中古農機は福岡・佐賀のJA農機センターにも卸しており、この姿勢に絶対の信頼を寄せられている。




小規模事業者持続化補助金を申請しようと思われたきっかけは?

最近は、北野町の若手生産者グループの会合などにも顔を出させていただくようにしています。北野町は葉物野菜の栽培が盛んですが、生産者の方から「大手メーカーが出している既存の機械は、北野町の生産スタイルに合わない」という話を聞きまして…。
うちとしても果樹苗木の機械開発で培ったノウハウを葉物野菜に広げたいと思っていましたので、新製品の開発に取り組むことにしました。 ただ、農機具の開発やそれに付随する事業には、かなりの費用がかかります。そこで商工会さんに相談し、補助金を申請させてもらいました。

小規模事業者持続化補助金の計画内容

Q.事業の内容は?
「ホウレン草掘取機の開発を核とした新規顧客開拓事業」です。
他社の既存製品として「ホウレン草根切機(乗用ハイクリトラクタ型・管理機型)」というのがあるんですが、生産者の方から以下のようなデメリットを指摘されました。

・管理機型は久留米地区で推奨されている高畝栽培に対応できない
・乗用ハイクリトラクタ型は高畝に対応できるがトラクタの全長が長く、小回りがきかずハウスに向かない
・乗用ハイクリトラクタ型は前後に作業できない場所があり、無駄が生じる
・乗用ハイクリトラクタ型は管理機型の5〜6倍と価格が高すぎる
・走行速度が15kmと遅く、圃場間の移動に大型トラックが必要

これらの点を改善するため、「高さと性能を持ち合わせ、根切りと掘り上げを同時に行う堀取機」を開発することにしました。

まずは弊社の「果樹苗木堀取機」をベースに、久留米地区の高畝栽培に対応できるように幅や高さを改良しました。また収穫しやすくする工夫として、掘取機を振動させるようにしたんです。振動させるとホウレン草が浮き上がってきて、収穫がラクになりますから。
久留米地区はやる気のある若手農業者が多いため、空いている圃場は取り合いなんですよ。そのため圃場が一箇所に集中しておらず、生産者の方々は圃場から圃場へと移動しながら作業されています。そこで機械をコンパクトにし、軽トラで運べるようにしました。コンパクトな方が作業上の小回りも効きますしね。価格は100万円以内に抑え、値ごろ感を出したいと思っています。

Q.将来の展望は?
すでに試作機で、生産者グループの方にホウレン草を収穫してもらいました。
実際に使ってもらって、「これなら機械さえ通せば、あとはホウレン草を集めるだけで良いからラク」「素人でもできる」という言葉をいただいています。「作業効率が上がるから、この価格なら1年で元が取れる」と、さっそく予約してくれた方もいて評判は上々です。

北野の生産者さんたちの意見を取り入れた北野町仕様となってはいますが、実際に使う方の意見ですので、他の地区でも使い勝手は良い筈です。ですので、将来的にはホウレン草栽培が盛んな地区のJAさんに声かけしたいと思っています。幸いうちは中古農機の卸売でJAさんとのつながりがあります。そういった所から徐々に広げていきたいですね。

小規模事業者持続化補助金の活用により期待できる効果

補助金は試作機の開発・改良のほか、ホームページやカタログの作成に使用しました。
今までは果樹苗木というニッチな市場だったので、農家さん同士のクチコミで広げてもらうことができました。しかし今回はホウレン草というメジャーな市場ですので、できるだけ多くの方に知っていただくことで、より多くの反響が期待できると思っています。
今回のように農家さんと一緒に農機具を作ることは、私たちにとってとても重要です。大手メーカーさんのように人海戦術で、1軒1軒を訪問販売していくことはできません。同じことをしていても、絶対に勝てない。他社にはない機械を売ることが、今後の売り上げに大きく貢献してくれると思っています。

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地元生産者の小さな声を拾う…目指すは農家のパートナー
私たちが目指しているのは、農家さんのパートナーです。
同じ作物でも農作業には地域差があります。画一的な機械では、地域差まではカバーできないんです。そこで私たちが持つ専門機械の知識やノウハウで、地元の農家さんにとって本当に役に立つ、使いやすい機械を作っていきたいと思っています。
田主丸町の果樹苗木や、北野町の葉物野菜など、幸いなことに久留米地区は専業農家さんが多く、やる気のある若手後継者もたくさんいます。
地域のみなさんと一緒になって、地元に根ざした活動を行っていけば、将来的にも新しい機械の需要を掘り起こすことは可能だと思っています。

生産者のニーズをキャッチ!便利な道具は海をも越える
最近では生産者の方々が、機械や便利な道具を取り入れるなど、効率の良さを重視するようになってきました。今は働いてくれる人を確保するのが難しくなっていますから、農家さんのニーズが変化してきたなと感じます。
うちでも生産者の方から「ネットで見つけた接ぎ木用のハサミがほしい」と相談されて、ニュージーランドからの初輸入に踏み切りました。接ぎ木は機械化しづらいデリケートな作業なんですが、そういった実情を知っているのもうちの強みです。
農家さんのこだわりを損ねることなく、便利さを追求する…。あくまでも農家さんのニーズに即した事業を行っていきたいですね。

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